寝ていないのに、寝違えた。しかも右
何かを取ろうと手を伸ばした瞬間、右の肩甲骨のあたりにピキッと走った。あるいは振り向いた拍子に、くしゃみをした直後に。朝の布団の中ではなく、日中にいきなり。
感触は寝違えそのものなのに、寝ていない。そして左は何ともないのに、右だけ。
このふたつの引っかかりが、検索の言葉にそのまま表れています。名前の合わない痛みは不安を大きくしますよね。片側だけとなればなおさらです。順番にほどいていきましょう。最初にやるべきは、原因探しではなく見分けです。
最初の五分で確かめること
三つ、試してください。
首や腕を動かすと、痛みの強さが変わるか。姿勢を変えると、楽になる角度と痛む角度があるか。指で押していくと、ここという場所が見つかるか。
三つそろえば、筋肉や関節まわりで起きている見込みが高くなります。動きと痛みが連動しているのは、動かす装置の側に理由があるサインだからです。
逆に、どの向きに動かしても痛みが変わらない。じっとしていても同じ強さで続く。押しても場所が定まらない。この並びなら、次の章が本題になります。飛ばさず読んでください。
右の肩甲骨は、おなかの右上とつながっている
内臓の不調が、離れた場所に痛みとして響くことがあります。関連痛と呼ばれる現象で、おなかの右上にある臓器、胆のうや肝臓のまわりで起きた問題が、右肩や右の肩甲骨のあたりに出ることが知られています。
右側の背中を調べて怖くなった方は、たぶんこの情報に触れたはず。だから隠さず、見分けの手がかりを置いておきます。
疑いが濃くなるのは、こういう並びです。動きや姿勢と関係なく痛む。強くなったり弱まったりの波がある。食後、とくに脂っこいものを食べたあとに強まる。発熱や吐き気を伴う。みぞおちや右の脇腹も痛む。白目や肌が黄色っぽい。
ここに当てはまるものが重なるなら、内科や消化器科へ。整体の出番ではありません。
もうひとつだけ。胸の圧迫感、冷や汗、息苦しさを伴う痛みは、側がどちらであっても様子見をしないでください。救急への連絡をためらう場面ではないです。
突然は、突然じゃない
心当たりのある動きが何もないのに痛くなった。ここが一番腑に落ちないところでしょう。
引き金と原因を分けて考えてみてください。手を伸ばす、振り向く、くしゃみをする。引き金はどれも些細です。でも、それが最後の一滴だったとしたら。
コップに水がたまり続けていて、ふちぎりぎりで持ちこたえていた。そこへ小さな一滴が落ちて、あふれた。前日までの長時間のパソコン作業、冷房の風、抜けない緊張。そういうものが水位を上げていて、当日の動きはきっかけに過ぎなかった。
限界まで張り詰めた筋肉は、些細な刺激で一気に防御に入ることがあります。ガチガチに固めて、それ以上動かせないようにする。寝違えと同じ感触になるのは、体が同じ守り方をしているからなんですね。
だから、原因探しで当日の行動だけを振り返っても見つかりません。数日さかのぼってください。
なぜ、右ばかりなのか
右利きの方の一日を思い浮かべてみます。
マウスを握る。ペンを持つ。包丁を使う。スマホを操作する。細かい作業のほとんどを右腕が引き受けていて、そのあいだ右の肩甲骨まわりの筋肉は、腕を空中で支え続ける仕事をしています。動いていないように見えて、止めておく仕事をしている。これが地味に消耗するんです。
左腕はといえば、隣で休んでいる時間が長い(笑)。同じ体の中で、勤務時間がまるで違う。
マウスが体から遠い位置にあると、右腕は前へ外へ差し出された形で何時間も固定されます。肩甲骨と背骨のあいだの筋肉が引き伸ばされたまま働き続ける配置です。伸ばされながら働く筋肉は、縮んで働く筋肉より早く音を上げます。
鞄をいつも右で持つ、右を下にして眠る、頬づえは右。そういう偏りも水位を上げる側に回ります。左利きの方は、これを裏返して読んでください。
最初の二日間
痛みが強いうちは、やることを絞ります。
まず、どこまで動くか何度も確かめないこと。試したくなる気持ちは分かります。ただ、限界を探る動きは、そのたびに防御を強めます。確認は一往復まで。
触って熱を持ち、ジンジンうずくなら、薄い布ごしに短時間冷やす。熱感がなく、こわばって動かないだけなら、温めたほうが動きが戻りやすい方が多いです。判断はこれで足ります。
夜は、右腕の重さを逃がす形を作ってください。左を下にして横になり、胸の前に抱えられるものを置いて右腕を預ける。あお向けなら、右の二の腕の下にたたんだタオルを差し込んで、肩が後ろへ落ちないよう支える。腕の重みが一晩じゅう肩甲骨を引っぱるのを防ぐだけで、朝の固まり方が変わります。
仕事を休めない方は、右肘の置き場所を確保すること。そしてマウスを、いつもより体の近くへ。この二つだけでも、日中に積む量が減ります。
動きが戻ってきたら
二日、三日たって可動域が開いてきたら、順番に進めます。
入り口は呼吸です。痛みをかばっているあいだ、息は浅くなり、肋骨の動きが小さくなっています。椅子に浅く腰かけ、鼻から吸って、口から細く長く吐く。吐き切るころ、背中の内側がじわっとゆるむのを待ってください。
次に、胸のひねり。座ったまま両手を胸の前で重ね、息を吐きながら上体を右へ、左へ、ゆっくり回します。肩甲骨は背骨の動きに乗って位置を変えるので、幹から先に動かすほうが早い。
それから肩甲骨。両肘を曲げて肩の高さに構え、肘先で大きな円を描きます。速さはいりません。遅いほど背中側に届きます。
最後に、壁を使った腕の上げ下ろし。壁に背中をつけて立ち、腰が反らないよう気をつけながら、両腕を壁に沿わせて万歳の形へすべらせ、下ろす。右だけ引っかかる高さがあれば、そこがいま取り戻す途中の範囲です。痛みの出る角度は通らないでください。
右だけ繰り返す人へ
半年おきに、決まって右。そういう方には、生活の棚卸しをすすめています。
マウスと体の距離。肘の支えの有無。スマホを持つ手。鞄の側。眠るときに下にする側。頬づえの側。書き出してみると、右にばかり並ぶことに気づくはずです。
全部を直す必要はありません。動かせるものから一つずつ。スクロールくらいなら左手に任せてみる。作業の切れ目に右手をマウスから下ろして、ぶらぶらと振る。頭上の棚へ右腕を伸ばす場面を一日に何度か作る。
止めておく仕事ばかりだった右腕に、大きく動く時間を返してあげる。それが水位を下げるということです。

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