尾てい骨がズキッとする痛み、その正体をたどる
椅子から立ち上がる、あの一瞬。お尻の真ん中の奥から刺すような感覚が走って、思わず動きが止まる。尾てい骨の痛みを抱えている人の多くが、この立ち上がり際でいちばん顔をしかめます。座っている間はまだ我慢できる。動き出しがつらい。
きっかけとしてよく聞くのが尻もちです。階段の最後の一段を踏み外した。濡れた床で足を取られた。子どもと遊んでいてバランスを崩し、そのまま尻から落ちた。こういう出来事がある人は、まだ道筋をたどりやすいほうなんですよね。
困るのは心当たりがゼロの人。ある日ふと気づいたら座るのがつらくなっていた、というパターン。
尾てい骨は背骨のいちばん下、仙骨の先端に小さくぶら下がるように付いています。位置としてはかなり奥まっていて、自分で触ろうとしてもうまく探せない人がほとんど。その周囲には骨盤の底を支える組織や、お尻の深いところにある筋肉、太ももの裏へつながる線が集まっています。
ここがポイント。座った姿勢が長く続くと、周りが硬く縮んで尾てい骨を引っ張る格好になります。骨そのものより、引っ張っている側に火種があることが少なくない。
尾てい骨だけをさすっても手応えがない理由も、そこにあります。引っ張られている当事者をいくらなでても、綱を握っている手はゆるまない。
伸ばす場所を間違えると、何十日やっても変わらない
以前、毎晩ストレッチしているのにまったく変わらないと相談を受けたことがあります。何をしているか聞いてみたら、痛む骨のあたりを指でぐいぐい押し込んでいた。しかも力いっぱい。はぁ…と、思わず息が漏れました。あれでは周りの組織が身構えるだけ。
伸ばしたいのは四か所。お尻の奥、股関節の前面、太ももの裏、そして腰から下の背骨まわり。この四つは尾てい骨の位置を左右する綱引きの担当者みたいなものです。
とくに股関節の前は盲点。座りっぱなしの時間が長い人ほどここが縮み、骨盤が後ろへ倒れ、体重が尾てい骨側へ乗る流れができます。お尻ばかり伸ばして前面を放置すると、片側の綱だけゆるめている状態。バランスは戻りません。
椅子に座ったままできる三つ
デスクを離れられない日でも、これならこっそりできます。
一つめ。片方の足首をもう片方の膝の上にのせ、数字の四を作ります。背すじを立てたまま、股関節から体を前へ倒す。お尻の奥、ちょうど痛む側の外側あたりにじんわり伸びる感覚が出れば、狙いどおり。息を五回ぶん吐きながらキープ。反動はいりません。
二つめ。椅子の座面の前半分に浅く腰かけ、片脚を大きく後ろへ引きます。引いた側の膝を少し落として、その脚のつけ根の前を伸ばす。上半身は真っすぐのまま。ここで腰を反らせてしまう人が多いので、お腹に軽く力を入れて、みぞおちを引き上げる意識で。
三つめ。両足を床につけ、背もたれから離れて座り、息を吐きながら背中を大きく丸めます。おへそをのぞき込むように。吸いながらゆっくり戻す。骨盤ごと後ろへ丸めて、また起こす。この往復が、固まった腰から下の背骨に動きを取り戻します。
床に寝てじっくり伸ばす二つ
夜、風呂上がりが向いています。体が温まっている時間帯のほうが動かしやすい。
仰向けで両膝を抱えて、背中の下のほうを軽く床に押しつけるように丸めます。尾てい骨が床に当たって痛い場合は、腰の下に薄手のタオルを敷いて調整を。痛みが出る姿勢を我慢して続ける意味はありません。
もう一つは四つん這い。手を肩の下、膝を股関節の下に置き、息を吐きながら背中を天井へ丸める。吸いながらゆるめる。猫が伸びをするあの動きです。尾てい骨を床のほうへ、そして頭のほうへ、しっぽを振るようなイメージで小さく動かすと、骨盤の底あたりがふわっとゆるむ感じが出てくることがあります。
うつ伏せがつらい人もいますよね。無理に伏せる必要はないです。
逆効果になりやすい伸ばし方
痛む骨を直接押す。これが最多です。硬い場所を柔らかくしたい気持ちは分かるものの、尾てい骨まわりはデリケート。押し込むほど周囲が防御反応で縮みます。
反動をつけて勢いよく倒れ込むのも避けたい。ぐいっ、ぐいっと弾む動きは、伸ばすというより引きちぎる方向へ働きます。
長時間座ったあと、立ち上がっていきなり深く伸ばすのも危ない。固まりきった状態からの急な引き伸ばしは、翌日にズーンと重い痛みを残すことがある。まず数十歩ゆっくり歩いて、それから伸ばす順番で。
痛みが強くなる方向へは入らない。伸びている感覚と痛みは別ものです。ここの見分けがつかないうちは、心地よさの手前で止めておくのが安全。
座り方とクッション、日中の過ごし方で差がつく
正直言って、夜のストレッチより日中の座り方のほうが効いてくる人は多いです。一日八時間の姿勢と、五分のストレッチ。単純に接している時間が違いますから。
背もたれに深くもたれて骨盤が後ろへ転がると、尾てい骨に体重が乗ります。坐骨、つまりお尻の底にある二つの骨の出っ張りに体重をあずける座り方へ変える。座面に手を差し込んで、ゴソゴソと坐骨の位置を探ってみると分かりやすい。
クッションは、中央に穴が開いたタイプか、後ろ側が切り取られた形のものが選ばれます。尾てい骨が座面に触れない構造かどうかが判断基準。柔らかすぎるものは沈んで骨盤が転がるため、ある程度の反発があるほうが座りやすい。
そして立つ回数。三十分に一度でも席を離れて数歩あるくだけで、同じ場所にかかり続ける圧が切れます。デスクワークの人には、椅子の高さを少し上げて股関節が膝より高くなる位置を試してもらうことがあります。腰が丸まりにくくなり、後ろへの転がりが減る。
車の運転が長い人は、シートの背もたれを少し起こす。柔らかい低いソファは、痛みが落ち着くまで避けたほうが無難です。

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