その痛み、どのタイプですか
踵が痛いと相談を受けたとき、私が最初に確かめるのは痛みの手触りです。
皮膚の表面がヒリヒリして、靴下が触れるだけで沁みる。これは擦れ。踵の後ろの出っ張りをぐっと押されているような、一点に集まる痛み。これは当たり。歩き出しの一歩目に踵の底からズキッと突き上げてくる、皮膚はなんともない。これは奥の問題です。
三つとも対処が違います。全部まとめて靴擦れとして扱うから、絆創膏を貼っても中敷きを替えても手応えがない。まずここを分けてください。
大きい靴を選ぶと、踵が擦れる
きついと痛いだろうと考えて、余裕のある靴を選ぶ。ごく自然な判断ですよね。ところが踵の痛みに関しては、これが裏目に出ます。
足が前へ滑ると、踵は靴の中で浮きます。浮いた踵は一歩ごとに靴の内側を上下にこすり続ける。歩数の分だけ摩擦が積み重なって、夕方には皮がめくれている。大きい靴は、擦る回数を増やす靴なんです。
見分け方があります。歩いていて踵がぱかぱか浮く感覚があるか。靴を脱いだとき、つま先側の内側が黒ずんで潰れていないか。この二つが当てはまるなら、サイズではなく足の前方向への滑りを止める工夫が要ります。
紐を結び直すだけで変わる人
意外と知られていないのが、紐の締め方です。
つま先寄りだけを締めても、足は前へ滑ります。止めるべきは足の甲の高い部分。ここから足首寄りにかけてしっかり締めると、足が靴の後方に固定されて、踵の浮きが減ります。
朝きつく結んで、そのまま夜まで一度もほどかない方が多い。足はむくむし、歩けば緩みます。昼にいったんほどいて結び直すだけで、午後の擦れ方が違ってくる。
紐のない靴なら、踵の内側に薄いパッドを貼って、その分だけ足を前に出させない形を作る。かかとを埋めるのではなく、足が後ろへ収まる場所を作ってあげる感覚です。
靴の芯と、あなたの骨の形
革靴の踵部分には芯が入っています。形を保つための硬い部品で、これが足の骨に当たると、擦れとは別の痛みが出る。
踵の後ろに骨の出っ張りがある方は、この芯の高さと硬さで当たり外れが決まります。同じサイズでも痛くならない靴があるのは、そのため。足が悪いのではなく、形の相性の問題です。
試し履きのとき、店内を数歩あるいて踵の後ろに圧を感じるなら、その靴は履き込んでも当たり続ける可能性が高い。革は横方向には馴染みますが、芯の高さは変わりませんからね。
今日、痛くなってしまった人へ
皮膚が赤いだけで破れていないなら、これ以上こすらないことが最優先。踵の後ろへ薄い保護材を当てて、摩擦の相手を皮膚から別のものへ移します。厚すぎるものを詰め込むと、今度は圧が増えて逆効果になるので加減が要ります。
すでに皮がめくれている場合は、傷の手当てが先。汚れを落として保護し、靴の中で直接こすれない状態を作る。ここを我慢したまま歩き続けて、翌週に腫れて来院された方を私は何度も見てきました。
その日のうちにできることとして、帰宅後に足の裏をゆるめておくのもいい。土踏まずのあたりを親指で押しながら、足の指を反らせたり丸めたりを繰り返す。足裏がこわばったままだと、翌朝の一歩目に響きます。
履き慣らすべきか、手放すべきか
高かった靴ほど、諦めがつかない。分かります(笑)。判断の目安を置いておきます。
甲まわりがきつい、小指が当たる、革が硬くて曲がりにくい。ここは履き込むうちに変わっていく部分です。
一方、踵が浮く、芯が骨に食い込む、足の長さそのものが余っている。これは時間で解決しません。中敷きや紐で埋められる範囲を超えていたら、無理に戦わないほうがいい。
痛みをこらえて歩く日々は、かばう歩き方の癖を残します。靴を守って体を崩す取引になっていないか、そこだけ見てください。
朝の一歩目が痛いなら、別の話
布団から降りた瞬間、踵の底に鋭い痛みが走る。少し歩くと薄れてくる。これは靴擦れではありません。
足の裏に張られている膜や、踵に付着する腱まわりで起きていることがあります。革靴が原因というより、硬い靴底や薄いクッションが引き金になって表に出てきたパターン。座り続けたあとの立ち上がりでも同じ痛みが出るなら、かなり当てはまります。
この状態で中敷きだけ替えても、なかなか手応えは出ません。踵に集まっている負担を、どこから減らすかを考える段階です。
硬いふくらはぎは、踵を引っぱる
ふくらはぎの筋肉は、太い腱になって踵の骨につながっています。ここが固まっていると、歩くたびに踵が後ろから引っぱられ続ける。
一日じゅう座って過ごし、夜になってようやく歩く。足首をしっかり曲げる場面がほとんどない生活を続けていると、ふくらはぎはガチガチのまま固定されます。その状態で硬い革靴を履けば、踵まわりに集まる負担は増える一方でしょう。
壁に手をついて片脚を後ろへ引き、踵を床につけたまま前の膝を曲げていく。ふくらはぎの上のほうが伸びたら、そこで止めて息を吐く。膝を軽く曲げた姿勢でもう一度やると、今度は踵に近い深い側に届きます。
ついでに足首を回してみてください。ぐるりと回したとき、途中で引っかかる方向はありませんか。その引っかかりが、着地のたびに踵へしわ寄せを送っています。

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