腰が痛くなってから、もう何年になるだろう。
病院に行ったら「異常なし」と言われた。湿布を処方されて帰った。しばらくしたらまた痛くなった。その繰り返し…。整体に行こうかと思ったこともある。でも悪化したら怖い、お金をかけて変わらなかったらどうしよう、という気持ちが邪魔をして、ずっと踏み出せないでいる。
そういう方が整体の現場には多い。腰痛は日本人の国民的な悩みと言えるほど広く、慢性化している方も少なくない。この記事では、整体師の視点から腰痛の原因をどう見るか、整体が何にアプローチしているのか、そして正直なところ何が変わって何が変わらないのかを書いていく。
腰痛の原因を整体師はどう見るか
筋肉・筋膜からくる腰痛
腰痛の多くは、腰まわりの筋肉と筋膜の問題が絡んでいる。
脊柱起立筋・腰方形筋・腸腰筋。これらが慢性的に緊張した状態が続くと、血流が滞り・老廃物が蓄積し・重さやだるさとして信号を送り続ける。デスクワークで同じ姿勢を保ち続ける、立ちっぱなしの仕事で腰に負荷をかけ続ける、そういった日常の積み重ねがこのタイプの腰痛をつくりやすい。
筋膜は筋肉を包み全身をつなぐ膜で、癒着すると動きが制限される。腰の筋膜が癒着すると、前屈みや起き上がりの動作で「つっぱる」感覚が出やすくなる。朝起き上がるときにギシギシする、あの感覚だ。
骨盤・骨格のアンバランスからくる腰痛
骨盤の傾きや歪みが腰痛の背景にあることは多い。
骨盤が前傾すると腰椎が過剰に反り、腰まわりの筋肉が常に縮んだ状態に置かれる。反り腰の方に腰痛が出やすいのはこのためだ。逆に骨盤が後傾すると腰椎のカーブが失われ、椎間板への圧力が偏りやすくなる。
骨盤の左右差も見逃せない。左右どちらかに体重をかける癖、足を組む習慣、荷物をいつも同じ側で持つ動作。これらが積み重なると骨盤が少しずつ傾き、腰まわりの筋肉が左右非対称な緊張をつくる。結果として、いつも同じ側だけ腰が痛い、という状態になりやすい。
胸椎の動きが固まっていることも、腰への負担につながる。本来は胸椎が担うべき回旋や前屈の動きを腰椎が肩代わりすることで、腰への負担が慢性的に積み重なっていく。
内臓・自律神経が関係する腰痛
見落とされやすいが、内臓の疲れや自律神経の乱れが腰痛として現れることがある。
腎臓は腰の深部に位置する臓器で、疲弊すると腰まわりに重だるさとして現れやすいとされている。慢性的な水分不足・冷え・過労が続く方に、この傾向が見られることがある。
自律神経の乱れが続くと、全身の筋肉が慢性的な緊張状態に置かれやすくなる。腰まわりも例外ではなく、ストレスが多い時期に腰の不快感が強くなる方は、この関与を疑う余地がある。
整体で腰痛にアプローチできる仕組み
筋膜と深部筋へのアプローチ
整体の施術では、表層の筋肉だけでなく深部の筋肉や筋膜の緊張にアプローチしていく。
腰痛に関係する腸腰筋は、腰椎から大腿骨をつなぐ深部の筋肉で、自分でほぐすことが難しい部位だ。ここが緊張すると骨盤が前傾し、腰への負担が増しやすくなる。施術で腸腰筋の緊張をゆるめると、骨盤の傾きが変わり・腰まわりへの負荷が分散されやすくなる。
筋膜への施術では、癒着した部分にゆっくりとした圧と動きを加えて、動きの制限をゆるめていく。朝のギシギシ感や前屈みのつっぱりが変わってくると、日常動作のしやすさが変わってくる。
骨盤・胸椎の可動域を整える
骨盤のアンバランスに対しては、仙腸関節まわりの動きを確認しながら、関節の動きを引き出すアプローチを行う。
骨盤の傾きや左右差が変わってくると、腰まわりの筋肉が受ける負荷のパターンが変わる。腰だけを見るのではなく、骨盤から股関節・胸椎まで全体を含めて施術を組み立てることで、腰への負担の原因に届きやすくなる。
胸椎の回旋可動域を広げるアプローチも腰痛には関係する。胸椎が動ける状態になると、腰椎が過剰に動く必要がなくなり・腰への負担が軽減されやすい。意外と、胸椎へのアプローチが腰の変化につながるケースは少なくない。
整体でアプローチしやすい腰痛・しにくい腰痛
整体が関わりやすいケース
姿勢のクセや日常の動作パターンからくる腰痛は、整体が関わりやすい領域だ。デスクワーク・立ち仕事・育児・スポーツなど、繰り返す動作や姿勢から生じた筋肉の緊張・骨盤のアンバランスは、整体のアプローチが届きやすい。
病院で「異常なし」と言われた腰痛も、整体が関わりやすいことが多い。レントゲンや検査では骨や神経の問題が見つからなくても、筋肉・筋膜・骨格のバランスに問題が生じていることはある。検査で異常がないのに痛みが続く、というケースの多くはこのタイプだ。
産後の骨盤の不安定さからくる腰痛、慢性的なぎっくり腰体質の方も、整体が関わりやすい状態といえる。
ぎっくり腰と整体の関係
急性期にできること・できないこと
ぎっくり腰は突然やってくる。あの瞬間の衝撃は、経験した人にしかわからない…。
ぎっくり腰直後の急性期、発症から48〜72時間は炎症が強い時期で、この段階では強い刺激を加える施術は向いていない。この時期の対応として、まず安静を保ち・無理に動かさず・必要であれば医療機関で炎症の状態を確認することが先になる。
急性期を過ぎて動けるようになってきた段階から、整体が関わりやすい状態になる。腰まわりの筋肉の緊張をゆるめ・骨盤のバランスを整え・再発しにくい体の状態に向けてアプローチを組み立てていく。
ぎっくり腰を繰り返す人の共通点
まさか、またやってしまった…。そういう経験を繰り返している方がいる。
ぎっくり腰を繰り返す方には共通したパターンがある。骨盤や腰椎のアンバランスが慢性化している、腹部のインナーマッスルが働きにくい状態になっている、日常の体の使い方に腰への過負荷を生む動作が組み込まれている。
ぎっくり腰は突発的に起きるように感じるが、実際は慢性的な蓄積の上に起きることが多い。痛みが落ち着いてから整体で体全体のバランスを整えることが、繰り返しを減らすアプローチになりうる。

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