走り出しは何ともない。三キロを過ぎたあたりから、外くるぶしの下がズキッとしてくる。 帰って靴を脱ぐ頃には忘れているのに、翌朝の一歩目でまた思い出す。 このまま走っていいのか、それとも止まるべきなのか。
走っていい痛みと、その日でやめる痛み
判断の材料は四つで足ります。
走り始めて数分で薄れていく痛みなら、様子を見ながら進めることが多い。走るほど強くなるなら、その日は切り上げる。 片足で軽く跳んでみる。着地でうっと来るようなら、走る動作にはまだ早い。 くるぶしや骨の際を指で押して、狭い一点に響く場所がないか。ここが疲労骨折との分かれ道になるので、思い当たれば走らずに医療機関へ。 そして翌朝の一歩目。これが一番正直な指標。昨日より痛いなら、体の処理能力を練習量が上回っています。
我慢して走り切った翌日、階段の下りで膝まで痛み出す。この連鎖に入ると、休む期間が一気に伸びていく。
痛む場所で、見当をつける
外くるぶしのまわり。捻挫の古傷があるランナーに多い場所。過去に痛めた足首は感覚が鈍りやすく、外側でこらえる走りが続いていることがあります。 内側、くるぶしの後ろから土踏まずにかけて。着地でアーチが落ちる方に出やすい。 足首の前。しゃがむと詰まる感じがあるなら、背屈が制限されて骨同士がぶつかるように感じている状態。 後ろのアキレス腱。朝の一歩目のこわばりが目印。 奥の方がジンジンする、しびれをともなう。これは自己判断の範囲を外れます。
同じ足首の痛みでも、やることがまるで違う。とりあえずふくらはぎを伸ばしておく、で片付く話ではないんですよね。
足首は、帳尻を合わせている場所
一歩ごとに体重の何倍もの力を受け止め、着地の角度のズレを吸収し、次の一歩へつなぐ。足首はそういう仕事をしています。 股関節が使えていない。お尻が働いていない。上半身が沈んで着地が体より前になる。そのしわ寄せは、全部下へ落ちてくる。
痛いのは足首でも、原因が足首にある人ばかりではありません。 実際、外くるぶしの痛みで相談に来られた方の股関節が、驚くほど動かなかったことがある。足首の当て込みを続けてもぶり返していたのが、股関節の動きを戻してから走行距離を伸ばせるようになった。
犯人捜しを足首の中だけで終わらせない。これが遠回りに見えて近道になります。
しゃがめますか、という三つのチェック
壁の前に立ち、つま先を壁から指二本ぶん離して膝を壁へ近づける。かかとが浮くなら、背屈が足りていない。走る動作でその不足を、どこかで補うことになります。 片足立ちを二十秒。ぐらつく側と安定する側の差が大きいほど、着地のたびに余計な仕事が発生している。 片足でかかとの上げ下げを十回。左右で回数や高さが違えば、そこが弱点。
三つとも家でできる。数字より、左右差に目を向けてほしい。
痛みが出た週に、何が変わったか
思い返すと、たいてい直前に何かが動いています。
距離を大きく増やした週。ペースを上げ始めた時期。 シューズを新調した直後。厚みや反発の違うモデルへ替えると、足首の使い方が変わります。 コースを変えた。下りが増えた。土から舗装路へ移った。 そして意外な伏兵が、路面の傾き。車道側へ水がはけるよう、歩道はわずかに斜めになっています。毎回同じ向きで走れば、片方の足首だけ内へ倒れ続ける。 トラックで同じ向きに回り続けるのも同じ理屈。
原因が生活の側にあるなら、ケアより先にそっちを変えた方が早い。
痛みが出た日、帰宅してからの数時間
熱を持っている、腫れぼったい、ズキズキと脈打つ。この日は冷やす方向で。十分ほど当てて外す。 重だるいだけで熱感がないなら、温めて動かした方が落ち着くこともある。触ってみて心地よい方を選べば、大きく外しません。
その晩の入浴は短めに。長風呂の後に痛みが増したという話は、けっこう聞きます。 就寝時、足を少し高くしておくと朝の張りが軽い。クッションを一つ足元へ。
翌朝の一歩目でチェック。ここで昨日と同じか軽ければ、方向は悪くない。
走れない期間を、空白にしない
完全に動かない選択は、実はもったいない。 足首に体重をかけずにできることは残っています。自転車、水中で歩く、上半身のトレーニング、股関節まわりの動き作り。心肺は落ちにくいし、戻りも早い。
歩き方にも気を配りたい。痛みをかばって外側を引きずるように歩くと、その癖が残ります。歩幅を狭くして、足の裏全体で着く。地味だけれど、ここを雑にした人ほど復帰後にぶり返す。
走る前の三分、走った後の三分
走る前。足首を回すだけでは準備になりません。 壁に手をついて、片足を後ろへ引いてかかとを床に残したまま体を前へ。次に膝を軽く曲げて、同じ姿勢でもう一度。ふくらはぎの上と下、両方に届きます。 その場で足踏みを二十回。かかとから着かず、足裏全体で。
走った後。すねの外側を手のひらで押さえて、足首を上下に十回。ここが張ると、翌日の前側の詰まりに変わります。 足裏はボールで転がす。土踏まずから指の付け根まで、ヒリヒリしない強さで。
三分ずつ。これを省いた日ほど、翌朝の一歩目がはっきり重い。
シューズを疑うタイミング
かかとの外側だけがすり減っている。片方だけ減りが早い。踏み抜いた跡が左右で違う。 靴底は、走り方の答え合わせをしてくれる資料です。
履き替えの目安は、走行距離だけでは決められません。クッションのへたりは見た目に出にくいので、同じペースなのに脚に来るようになったら替えどき。 新しい靴に替えて一週間以内に痛みが出たなら、まず靴を戻す。合う合わないは走ってみないと分からないので、責める必要はありません。
紐の締め方も見ておきたい。足首側を締めずに走っていると、靴の中で足が前後へ動いて、余計な力で踏ん張ることになります。
自分で粘らない方がいいサイン
・体重をかけると鋭い痛みが走り、歩き方が変わってしまう ・押すと一点に強く響く場所がある ・腫れが引かない、熱を持っている ・しびれ、足先の冷たさ、色の変化 ・捻挫の後から、階段や不整地でぐらつく感覚が残っている ・数週間たっても、走り出しの痛みが同じ強さで出る
骨の問題や靭帯の緩みは、休んだだけでは片付かないことがあります。判断がつかない時点で、画像を撮ってもらうのが結局は最短。ドキッとするより、確認して安心して走った方がいい。
復帰は、段階を飛ばさない
痛みなく普通に歩ける。ここが最初の関門。 次に、早歩きを十五分。翌朝に響かないなら次へ。 そしてジョグを十分だけ。距離ではなく時間で区切ると、無理をしにくい。 問題なければ、少しずつ時間を足していく。痛みが顔を出したら、一段前へ戻る。
焦って飛ばした人ほど、同じ場所を何度も痛めて戻ってきます。逆に、退屈な段階を踏んだ人は、その後ぱたりと相談に来なくなる。
一週間の休みは、記録を守るための投資
走れない日が続くと、積み上げてきたものが崩れる気がして落ち着かない。その気持ち、痛いほど分かります。 ただ、一週間で済んだはずの痛みを押して走り、二か月を失った例を何度も見てきました。
足首は、その週の走り方の記録が残る場所。 今日の痛みは、先週のどこかで生まれている。距離か、路面か、靴か、股関節か。心当たりを一つ潰してから、次の一歩を踏み出せばいい。

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