わき腹から胸にかけて、肋骨の線に沿ってズキッと走る痛み。深く息を吸うとビリッとしみて、体をひねると顔をしかめる。片側だけ、ピリピリと電気が走るような感覚のことも。これって心臓や肺の病気なのかも…と不安がよぎりますよね。
その痛み、肋間神経痛と呼ばれるものかもしれません。ただ、名前を知ることより先に、どうしても伝えておきたいことがあります。胸まわりの痛みには、急いで確かめるべき別の原因が隠れていることがある。まずはそこから、順にお話しします。
肋間神経痛とは、肋骨に沿って走る神経の痛み
肋骨と肋骨のあいだには、神経が通っています。背骨のあたりから、あばらに沿って前へぐるりと回り込む神経です。この神経が刺激を受けると、肋骨の線に沿って、鋭い痛みが走る。これが肋間神経痛と呼ばれる状態です。
痛み方には、いくつかの顔があります。刺すような、電気が走るような、あるいはじんじんと重いような。多くは体の片側に出て、息を吸ったり、咳やくしゃみをしたり、上体をひねったりした拍子に、つよく差し込みます。指でたどると、その一点がひときわ響くことも。
覚えておいてほしいのは、これがひとつの決まった病気の名前ではなく、痛みの出方につけられた呼び名だということ。だからこそ、その裏で何が神経を刺激しているのかが、大事になってきます。
なぜ起こる?痛みの引き金になるもの
はっきりした原因が見当たらないことも、少なくありません。長く続く前かがみの姿勢、たまった疲れ、心の張りつめ。こうしたものが背中や胸まわりの筋肉をこわばらせ、神経を刺激することがあります。デスクワークで一日じゅう縮こまっている人に、じわじわ忍び寄りやすいタイプです。
ストレスとの結びつきも、あなどれません。気を張る日々が続くと、体は無意識に力んで、胸やわきの筋肉もかたくなりがち。そこへ冷えや睡眠不足が重なると、神経はいっそう過敏になります。忙しさのピークや、季節の変わり目に出やすいのは、こうした背景があるからでしょう。
背骨や肋骨そのものに理由がある場合もあります。胸の背骨の状態や、肋骨のひび。骨がもろくなっている年配の方なら、気づかぬうちの圧迫骨折がひそんでいることもあるんです。
そして、見落としてはいけないのが帯状疱疹です。神経に沿って、うずくような、ちくちくとした痛みが先に出て、あとから発疹が現れることがあります。片側の肋骨に沿ってこうした痛みが続くなら、早めに受診してほしい理由が、ここにあります。
その胸の痛み、まず確かめてほしいこと
ここが、この記事でいちばん強くお伝えしたいところです。胸やわき腹の痛みは、心臓や肺の不調が、そっくりな顔をして現れることがあります。肋間神経痛だろうと自分で決めつけるのが、いちばん危うい。びっくりさせてしまうかもしれませんが、命に関わる原因は、そう多くはありません。ただ、その見分けは自分ではつかない。だからこそ、危ないものを先に外しておくことが肝心なんです。
次のような場合は、様子を見ずに、すぐ医療機関へ。息苦しさをともなう。冷や汗が出る。胸が締めつけられるように痛い。痛みが腕やあご、背中へ広がっていく。めまいがする。突然、激しく痛みだした。こうしたサインは、急を要する状態のことがあります。ためらわず、助けを呼んでください。
何科にかかる?正しく見立ててもらう
原因がこれだけ幅広いのですから、自己判断は禁物です。まずは中身を診てもらうことが、遠回りに見えていちばんの近道になります。
心臓や肺が気がかりなら内科、背骨や肋骨まわりなら整形外科、発疹をともなうなら皮膚科。どこへ行けばいいか迷うときは、まずかかりつけ医に相談して、道案内をしてもらうのも手です。あれこれ迷ったすえに受診をずるずる先延ばしにするより、その一歩を踏み出すことが大切。
はっきりさせておくと、整体は病気を診断したり治したりする立場にはありません。痛みのおおもとを突き止め、それに合った対応を決めるのは、専門の医療機関の仕事です。まずはそこを通ることが、出発点になります。
どのくらいで良くなるの?
いつ楽になるのか。いちばん気になるところですよね。ただ、ここも原因しだいで、見通しは大きく変わります。姿勢や疲れが引き金なら、その負担が減るにつれ、比較的すみやかにおさまっていくことが多い。いっぽう、帯状疱疹や骨の問題がからんでいるなら、そのもとへの対応が先で、日数もそちらに左右されます。
だからこそ、まず正体をはっきりさせることが、結局は早道になります。何日で治るという数字を追いかけるより、自分の痛みが何からきているのかを知るほうが、ずっと心強いはずです。
対処法。落ち着いてからできること
こわいものではなかった…姿勢や疲れからくるタイプだと分かった。そう見立ててもらえたなら、ここから自分でできることがあります。
まずは、痛みを強める動きを避けて、体を休めること。無理にひねったり、重い物を持ち上げたりは、しばらくお預けに。筋肉のこりが背景にあるなら、蒸しタオルや入浴で、胸や背中をじんわり温めると、それがほぐれて楽になる人もいます。
呼吸も、そっと味方につけてください。痛いと、つい息を浅くこらえてしまいますよね。でも、浅い呼吸は胸まわりをいっそう固くします。痛くない範囲で、ゆっくり長く吐く息を意識するだけでも、肩やあばらの力がすっと抜けていきます。
日常では、つらい時期に無理をしすぎないこと。とはいえ、おそれてずっと動かずにいると、かえって胸まわりは固まっていきます。痛くない範囲で、いつもの暮らしをゆるやかに続ける。このさじ加減が、案外だいじなんです。
それでも痛みが引かない、だんだん強くなる。そんなときは、我慢を重ねず、もう一度医療機関の扉をたたいてください。
姿勢と、体の緊張をふだんから軽く
姿勢や緊張からくるタイプは、日々の体の使い方と、深くつながっています。一日じゅう背中を丸めてうつむき、肩をすぼめていれば、胸まわりは縮こまったまま。浅い呼吸が続けば、あばらの動きも小さくなっていきます。
だからこそ、ふだんから胸を開いておきたい。ときどき大きく伸びをして、肩甲骨を寄せる。深く息を吸って、あばらがふくらむのを感じる。それだけでも、胸まわりの居心地は変わってきます。ストレスや寝不足が続いているなら、そこをいたわることも、立派な備えのひとつです。
整体でお手伝いできるのも、この土台の部分です。痛みそのものを消す施術ではなく、力みにくい姿勢や、あばらの動きやすさを整えていく方向で。あくまで、医療機関で診てもらったうえで、という順番は変わりません。
肋骨に沿った痛みは、体からの、少し強めの便りです。まずは正体を確かめて、心配の芽を摘む。そのうえで、姿勢と呼吸をゆるめていく。あわてず一つずつ手を打てば、その痛みと落ち着いて向き合えるようになります。

コメント