また同じ場所が擦れている。
新しい靴を履くたびに、アキレス腱のあたりがヒリヒリと痛む。靴擦れができて、絆創膏を貼って、治りかけた頃にまた擦れる。かかとの上の同じ場所ばかり…。お気に入りの靴なのに、履くのが憂鬱になってきた。
アキレス腱部分の靴擦れには、起きやすい理由がある。原因を知れば、防げることがほとんどだ。
なぜアキレス腱部分は靴擦れしやすいのか
アキレス腱まわりの構造的な特徴
アキレス腱は、ふくらはぎの筋肉とかかとの骨をつなぐ人体で最も太い腱だ。かかとの後面に付着しており、その表面は皮膚と皮下組織が薄い部位になっている。
皮膚が薄く・すぐ下に硬い腱と骨があるこの部位は、外からの摩擦・圧迫に対するクッションが少ない。同じ摩擦でも、皮下脂肪の厚い部位より皮膚へのダメージが蓄積しやすい構造といえる。
さらにこの部位は皮膚の血流が比較的少ないとされ、一度できた傷の治りが遅くなりやすい。アキレス腱の靴擦れだけなかなか治らない、と感じる背景にはこの構造的な事情がある。
歩行時の動きと摩擦の関係
歩行中、足首は常に曲げ伸ばしを繰り返している。この動きに伴って、アキレス腱まわりの皮膚は靴の履き口・ヒールカウンター上端と擦れ続ける。
一歩ごとにかかとが靴の中でわずかに上下し、そのたびに靴の縁がアキレス腱部分を擦る。1日に数千歩から1万歩を歩くとすれば、その回数だけ摩擦が積み重なることになる。靴と皮膚の相性が悪ければ、靴擦れができるのは時間の問題だ。
アキレス腱の靴擦れが起きる主な原因
ヒールカウンターの形・硬さが合っていない
アキレス腱の靴擦れで最も多い原因が、ヒールカウンター、つまり靴のかかとを包む部分の形・硬さが足に合っていないことだ。
ヒールカウンターの上端がちょうどアキレス腱に当たる高さにある靴・上端の縁が硬く角張っている靴は、歩くたびにアキレス腱を擦りやすい。新品の革靴・スニーカーはこの部分の素材がまだ硬く、足になじむ前の時期に靴擦れが起きやすくなる。
履き口の後方が高すぎる靴・カーブの形が自分のかかとのラインと合っていない靴も、アキレス腱への局所的な圧迫・摩擦を生みやすい。
靴のサイズ・かかとのフィット感の問題
靴のサイズが大きすぎると、歩くたびにかかとが靴の中で上下に動き、アキレス腱部分との摩擦が増える。かかとがパカパカ浮く感覚がある靴は、靴擦れの予備軍といえる。
逆に小さすぎる靴・かかとまわりがきつすぎる靴は、アキレス腱部分への圧迫が常にかかり続け、摩擦と圧迫の両方でダメージが蓄積しやすくなる。
靴ひもを緩く結んだまま履いている場合も、足が靴の中で動きやすくなり、かかとの浮き・摩擦が増えることがある。
かかとの骨の形の個人差
かかとの骨の後方上部が出っ張った形をしている方がいる。この出っ張りが大きいと、靴のヒールカウンターと接触しやすく、同じ場所に摩擦・圧迫が集中しやすくなる。
この骨の出っ張り部分への刺激が続くと、靴擦れだけでなく、その部位の腫れ・痛みが慢性化することがある。同じ場所の靴擦れを何年も繰り返している・かかとの後ろに硬い膨らみがある、という方は骨の形が関与している可能性がある。
かかとの形は人それぞれ違う。自分のかかとの形に合うヒールカウンターの靴を選ぶことが、繰り返す靴擦れから抜け出す入口になる。
歩き方・体のバランスの影響
見落とされやすいが、歩き方・体のバランスがアキレス腱の靴擦れに関与していることがある。
かかとの着地が不安定な歩き方・足首が内側や外側に倒れ込む歩き方をしていると、靴の中でかかとが斜めに動き、アキレス腱部分への摩擦が偏って増えやすくなる。靴のかかとの外側だけ・内側だけがすり減っている方は、このタイプの可能性がある。
片側だけ靴擦れができやすい場合、体の左右差・重心の偏りが関与していることもある。骨盤の傾き・脚への荷重の偏りが、左右の足の靴の中での動き方に差を生むためだ。
靴擦れができてしまったときの対処法
急性期の正しいケア
靴擦れができた直後は、まず患部を清潔に保つことが優先だ。
水ぶくれができている場合は、無理に潰さない。水ぶくれの中の液体は、傷を感染から守るバリアとして働いている。潰れてしまった場合は、清潔にしたうえでハイドロコロイド素材の傷パッドでカバーすることが回復を助けやすい。傷を乾燥させず・湿潤環境を保つことで治りが早くなりやすいとされている。
そして何より、原因となった靴をそのまま履き続けないこと。傷ができた部位への摩擦が続く限り、回復は進まない。数日は別の靴に切り替えるか、患部に当たらない履き物を選ぶことが回復への近道になる。
治りにくいときに見直すこと
アキレス腱部分の靴擦れは、前述の通り血流が少なく治りが遅くなりやすい部位だ。それでも2週間以上治らない・腫れや膿が出ている・痛みが強くなっている場合は、感染・別の問題が関与している可能性があるため医療機関への受診をすすめる。
同じ部位の靴擦れと腫れを何度も繰り返し・かかとの後ろの膨らみが大きくなってきた場合も、整形外科での確認を検討してほしい。
アキレス腱の靴擦れを防ぐ予防策
靴選びのポイント
試し履きのとき、かかとのフィット感を最優先で確認する。かかとを靴に合わせて履いたとき、歩いてもかかとが浮かない・ヒールカウンターの上端がアキレス腱に食い込まない、この2点を確認したい。
ヒールカウンターの上端の縁が柔らかい素材・丸みのある形状の靴は、アキレス腱への当たりがやさしくなりやすい。縁を指で押してみて、硬く角張っている靴は注意が必要だ。
試し履きは夕方に行うことをすすめる。足は午後に向けてむくみやすく、夕方のサイズ感が日常のフィット感に近くなる。
パッド・靴下の活用
かかと用のジェルパッド・シリコンパッドをヒールカウンターの内側に貼ることで、アキレス腱への摩擦をやわらげやすくなる。靴擦れが起きやすい靴には、最初からパッドで対策しておくのが現実的だ。
靴下の選び方も影響する。かかとまで覆う靴下を履くことで、皮膚と靴の間にワンクッション入る。素足・浅いフットカバーで履く場合は、アキレス腱部分が直接靴に触れるため摩擦が増えやすい。摩擦が気になる靴には、かかとをしっかり覆う靴下を合わせることが助けになる。
新しい靴のならし方
新しい靴をいきなり長時間履くことが、アキレス腱の靴擦れの典型的なパターンだ。
最初は室内・短時間の外出から始め、徐々に着用時間を延ばしていく。革靴ならレザーコンディショナーでヒールカウンター部分を柔らかくしておくことも、なじむ時間を短縮しやすくする。
新しい靴の日は、絆創膏・パッドをあらかじめアキレス腱部分に貼っておく予防策も実用的だ。擦れてから対処するより、擦れる前に守る方がずっと楽だ。
繰り返す人は体のバランスも見直したい
靴を変えても・パッドを使っても同じ場所の靴擦れを繰り返す場合、歩き方・体のバランスに原因が残っている可能性がある。
足首が内側や外側に倒れ込む歩き方・かかとの不安定な着地・体の左右差による荷重の偏り。こうした体の使い方のクセは、どんな靴を履いても靴の中での足の動き方として再現される。
整体では、足首・膝・骨盤のアライメントを確認しながら、歩行時の荷重バランスに関わる体の状態を整えるアプローチができる。体全体のバランスが変わることで、靴の中での足の動き方が変わり、特定部位への摩擦の偏りが減ることがある。
靴・パッド・体のバランス。この3つを合わせて見直すことが、繰り返すアキレス腱の靴擦れから抜け出す現実的なアプローチになる。

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