カールの最後の一回で、肘の内側にチクッと来た。 翌朝、ドアノブを回そうとして顔をしかめる。ベンチもデッドも予定に入っているのに。
休めば落ち着くのは分かっている。それでも止めたくない、という気持ちも分かります。 やることは、痛みを我慢して続けることではなく、肘を通らない負荷へ組み替えること。そこは分けて考えたい。
痛む場所で、原因の種目が絞れる
肘の内側、骨の出っ張りのあたり。握り込む動作と、手のひら側へ曲げる動作で負担が集中します。懸垂、デッドリフト、カール、ロープ系。
肘の外側。手首を手の甲側へ反らせる筋肉の付着部。ダンベルを保持する動作、プッシュ系での手首の固定、リストが寝たままのベンチで出やすい。
肘の後ろ、肘頭のあたり。伸ばし切る動作で痛むならここ。三頭筋の種目、ディップス、ロックアウトの効かせ方。
肘の前、あるいは関節の内側の奥。曲げた時に詰まる感じ。フロントラックの姿勢や、深く曲げる種目の後に出ることがあります。
まず、どこが痛むかを指でさせるようにする。
種目ごとの、負担のかかり方
ベンチプレス。手首が寝ていると、その角度のズレが肘へ落ちます。バーを手のひらの付け根に乗せ、前腕を床に対して垂直に保つ。グリップ幅を広げすぎると、肘の内側が引っ張られる。
懸垂とロウ。握り込む力が強い人ほど内側に来ます。指で引っかけるように持ち、肘から先ではなく背中で引く。ストラップを使うと握力の消耗が減って、肘の負担も変わります。
カール。ストレートバーは前腕の回旋が固定されるので、肘の内側に負担が寄りやすい。EZバーやダンベルにして、手首の向きを自由にすると楽になることが多い。
三頭筋の種目。頭の後ろへ下ろすタイプは、肘の後ろに強い引っ張りが出ます。伸ばし切って一瞬止める癖があるなら、そこも見直したい。
ディップス。体重がそのまま肘に乗る種目。可動域を深く取りすぎると負担が跳ね上がります。
ダンベルの保持そのものが原因になっている場合もある。重い物を握って歩く種目の後に痛むなら、そこが引き金。
肘は、通り道になっている
手首が硬い。肩の可動域が足りない。この二つがあると、動作のしわ寄せが肘に集まります。 肘はもともと、曲げ伸ばしと前腕の回旋しかできない関節。他の場所の不足を吸収する構造になっていません。
しゃがんで手首を反らせる姿勢が取れない。万歳した腕が耳の横まで上がらない。背中で手を組めない。 このどれかに当てはまるなら、肘だけ休めても同じことが起きます。
トレーニング歴が長い方ほど、大きい筋肉は強くなっているのに、関節の動く範囲だけ置き去りになっている。強い人が肘を痛めるのは、そういう構造です。
痛みが出る動きには、共通点がある
伸ばし切ってロックする。 握り込む力を最大まで使う。 前腕の回旋が固定されたまま、重い負荷を扱う。 手首が反ったり寝たりした角度で支える。
この四つのどれかが、痛む種目に必ず入っています。逆に言えば、四つを外せば同じ筋肉を鍛えられる。
痛みを外して続ける、置き換えの考え方
やり方は四つ。
グリップを変える。ストレートバーからEZバーやダンベルへ。順手を縦持ちへ。太めのグリップへ。手首の向きが変わるだけで、痛みが消える人はけっこういます。
可動域を切る。伸ばし切る手前で止める。深く曲げない。フルレンジが正義という考えは、痛みがある期間だけ横に置いておく。
種目を替える。フリーウエイトからマシンへ。押す種目でどうしても痛むなら、その週は引く種目と下半身に寄せる。腕を使わない下半身と体幹の日は、いくらでも作れます。
テンポを変える。反動をなくして、下ろす局面をゆっくり。同じ重量でも、関節へ届く衝撃が減ります。
ここで大事な線引きをひとつ。動作中に痛みが出ないこと、翌日に痛みが増えないこと。この二つを満たす範囲を探すのであって、痛いのに続けるのとは別の話です。
それでも、止めた方がいい場合
・動作中ではなく、日常でも痛む ・ドアノブやペットボトルの蓋で痛みが出る ・夜、痛みで目が覚める ・肘が腫れている、熱っぽい ・曲げ伸ばしの範囲が狭くなってきた ・しびれ、指の力が入らない
この段階に来たら、置き換えでしのぐ時期は過ぎています。上半身を押す引くの種目を一度止めて、状態を確認してから組み直す方が早い。
痛みが出た数日でやること
握る回数を減らします。買い物袋は腕で抱える。鞄はリュックへ。マウスを握り込む癖にも気を配りたい。 熱っぽく脈打つ日は冷やす方向で、十分ほど当てて外す。
肘の痛む一点は押さない。代わりに、そこから手首寄りへ数センチ下がった前腕の膨らみに手のひらを当て、軽く圧をかける。ここなら触れて構いません。 サポーターを使うなら、関節ではなく前腕の膨らみに巻く形。付着部にかかる引っ張りを途中で受け止める考え方です。
寝る時、肘を深く曲げたまま朝を迎えると、起き抜けにガチッと固まります。腕を伸ばしやすい体勢を探しておきたい。
戻していく時のドリル
前腕。手のひらを上に向けて机の縁に乗せ、軽い重りを持って手首を上げ、五秒かけて下ろす。外側が痛む人は、手のひらを下に向けて同じことを。十回を二セットほど。 上げる時は反対の手で助けて構いません。下ろす局面だけ自力で耐える。この形が回復の主役になります。
手首。四つんばいで手をつき、体重をゆっくり前後へ動かす。指先を膝の方へ向けたパターンも。 肩甲骨と胸。すくめて落とす、寄せて離す。椅子の背もたれで胸を軽く開く。肘の負担は、ここが動くかどうかで変わります。
重量の戻し方で、また痛める人が多い
痛みが引いた週に、以前の重量へ一気に戻す。これが再発の王道パターン。
半分程度の重量から入って、二週間かけて戻す。フォームを確かめる期間として使えば、無駄になりません。 伸ばし方も見直したい。毎週重量を足していた人は、そのペースが肘の回復速度を上回っていた可能性がある。
週の組み方も同じ。押す種目を三日続けた週の後に痛みが出ていないか。カレンダーを見返すと、引き金が見つかることがあります。
受診を考えるサイン
・数か月続いて、まったく変化がない ・しびれや、握力の低下がある ・肘が引っかかる、ロックして動かなくなる瞬間がある ・転倒やぶつけた後から始まった ・腫れが引かない
腱の話は時間がかかるとはいえ、変化ゼロで何か月も過ぎるのは別の問題。整形外科で確認してから組み直す方が、遠回りに見えて早く戻れます。
繰り返す人が、たいてい省いていること
ウォームアップ。いきなり本番の重量へ入る人ほど、肘から先に音を上げます。軽い重量で数セット、関節を通す時間を作る。 そして睡眠と食事。腱の回復は筋肉より遅く、削った睡眠の分だけ後ろへずれます。
種目を愛しすぎるのも、正直リスク(泣)。この種目だけは外せない、という思い込みが、いちばん復帰を遅らせます。
肘は、動作の途中に置かれた通り道。詰まりが起きるのは、たいてい上流か下流の事情です。 痛む一点をどうにかしようとする前に、手首と肩の動きを見に行く。そこから戻せた人は、同じ場所を痛めません。

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