外した翌朝、静かだった人と、首が回らなくなった人
枕を抜いて寝てみたら、朝いちばんに家族から静かだったねと言われた。そういう報告を受けることがあります。一方で、翌朝に首がズキッときて、いびきのほうは何も変わらなかったという方もいる。
同じことを試して、真逆の結果になるんですよね。
分かれ目は体型と寝る向きにあります。ここを飛ばして枕なしを勧める話が世の中に多いから、試して失敗した人が続出する。まず、のどで何が起きているのかを押さえたほうが早いです。
音が出ているのは、のどの奥
いびきは鼻や口が鳴っているわけではありません。のどの奥、空気の通り道が狭くなった場所で、粘膜がぶるぶる震える音。狭い隙間を速い空気が通り抜けると、そこが振動します。
眠ると、舌やのどのまわりの筋肉がゆるみます。起きているときは自分の位置を保っている舌の付け根が、仰向けでは重力に負けて後ろへ落ちる。通り道が細くなったところへ息が通れば、音が出る。
つまり、いびきの正体は通り道の狭さ。枕の話が出てくるのは、枕が首の角度を決めているからです。
あごが胸に近づくと、通り道が折れる
高すぎる枕で寝ている人の首を横から見ると、あごが胸のほうへ引き寄せられています。
ホースを思い浮かべてください。途中で折れば水の勢いが落ちる。のども同じで、あごを深く引いた姿勢では前側の通り道が狭くなります。スマホをのぞき込む格好のまま、一晩を過ごしているようなもの。
この状態の方が枕を低くすると、通り道の形が変わって音が小さくなることがある。枕なしで静かになったという話の中身は、たいていこれです。枕を捨てたから良かったのではなく、折れていた角度がまっすぐに戻っただけ。
枕なしが向く体、向かない体
では全員が外せばいいのかというと、そうはいきません。
仰向けが中心で、これまで高い枕を使ってきた方。この組み合わせなら、低くしていく方向は理にかなっています。
横向きが多い方は話が別。横向きで枕がなければ、頭は布団のほうへストンと落ちます。首が横に折れた形で何時間も過ごすことになり、朝の痛みだけが増える。肩幅の分だけ隙間が空いているのだから、そこは埋めないと。
背中が丸まっている方も注意がいります。猫背の姿勢で仰向けになると、もともと頭の位置が後ろへ行きにくい。枕を外すと頭だけが落ち込んで、のどの前側が突っ張ります。苦しくて目が覚めた、という感想はこのパターンが多いですね。
自分がどれに当てはまるか、寝入りばなの向きを思い出してみるといい。分からなければ、朝起きたときの体の向きが手がかりになります。
試すなら一晩。翌朝ここを見る
いきなり一週間続けないでください。まず一晩。
いきなりゼロにするより、バスタオルを畳んで低い高さを作るところから始めるほうが安全です。頭を乗せる台としてではなく、首の後ろにできている隙間を埋めるつもりで当てる。ここの発想が変わるだけで、翌朝の首の状態がまるで違ってきます。
朝、確かめてほしいのは四つ。首や肩に痛みが出ていないか。口の中がカラカラに乾いていないか。日中に強い眠気が来ないか。そして、可能なら寝ている間の音を録音しておくこと。
自分のいびきを初めて聞いたときの気まずさといったら(笑)。ただ、この記録があるかないかで、次に何を変えるべきかの精度が段違いになります。
枕をいじる前に、寝る向きと角度
正直言って、枕の高さより先に効いてくるものがあります。
一つは寝る向き。横向きになれば、舌の付け根が後ろへ落ちにくい。仰向けに戻ってしまうという方は、背中側にクッションを一つ置いておくと、寝返りの途中で止まってくれます。
もう一つが上半身の角度。頭だけを持ち上げるとあごが引けて逆効果になるので、胸から上をゆるやかに傾ける形を作ります。マットレスの下、頭側に薄いものを差し込んで全体を斜めにするやり方が現実的でしょう。座椅子で寝ると静かだったという話を聞くのは、この角度が偶然できているからです。
枕を替えるかどうかで悩んでいる方に、私はいつも先にこちらを試してもらいます。費用がかからないうえ、その晩から確認できますからね。
昼の首が、夜の呼吸に持ち越されている
日中ずっと下を向いている人の首は、頭が体より前へ出た位置で固定されています。この姿勢では、あごの下からのどの前側にかけての筋肉が引き伸ばされっぱなし。
伸ばされ続けた筋肉は、支える力を失っていきます。夜、体がゆるんだときに舌やのどまわりが落ち込みやすくなるのは、この延長線上の話。
口が開いたまま眠る癖も同じ根っこから来ていることがあります。鼻の通りが悪ければ口で息をするしかなく、口が開けば下あごが後ろへ下がって、通り道はさらに細くなる。鼻づまりが続いているなら、そちらを先に診てもらったほうが早い。
寝る直前の食事とお酒についても触れておきます。どちらも、のどまわりの筋肉のゆるみ方に関わってきます。飲んだ日だけ指摘される、という自覚がある方は、そこが手がかりです。
眠る前に、息を吐き切る
布団に入る前、椅子に浅く腰かけて、鼻から吸って口から長く吐いてみてください。吐くときに肋骨がすーっとしぼんでいく感覚を追いかける。それだけです。
一日じゅう浅い呼吸で過ごした胸は、閉じたまま固まっています。この状態で横になれば、寝入りばなから息が入りにくい。
続けて、両腕を上へ伸ばして大きく伸びをして、息を吐きながら一気に力を抜く。子どものころ、誰にも教わらずやっていた動きですよね。あれを意識して取り戻すだけで、横になった瞬間の体の落ち着き方が変わります。
肩をすくめて三秒止め、ストンと落とす。これも同じ狙いです。

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